SHARPさんのツイートを見てハッと原点に戻った気がしたお話
ソーシャルメディアの利用者数が増加するにつれ、プロモーションツール・マーケティングツールとしての色あいが年々強くなっているように感じます。
PCでTwitterの画面を開くとトレンドの最上部にはプロモーションが。タイムラインをスクロールしているとハッシュタグを走らせるカンバセーショナルキャンペーンが。インスタを開くとフォロワーが何万、何十万といるインフルエンサーが今日も元気にPR投稿です。
ソーシャルメディアはそれぞれにユーザーが何千万といるメディアに成長し、企業がそこで情報を発信して多くの人に自社の商品を告知するようになったことは、まあ自然な流れでしょう。
我々のようにその運用ノウハウを提供する業界側からも、「今流行りの運用スタイルはコレだ!」「クチコミを発生させるにはハッシュタグだ!」などとあらゆるテクニック論が展開されています。確かにそれぞれの論調にはエビデンスも明確に存在するために注目が集まります。
個人的には、特に数年前まではこの風潮になんとなく違和感を感じていました。
ソーシャルメディアってもっと人間味があって、いい意味でドロドロしていて、そこに企業も入ってきて一般ユーザと同化して、一緒にドロドロと楽しんでる間に気がつけばPR効果みたいなものが発生している、というのが、自分がイメージしていたソーシャルメディア運用の原型だったからです。
この間、いわゆる運用を外注して進める際のスタイルも変わってきています。
当初は「大事な告知事項だけは(従来の広告クリエイティブを決定する過程と同様に)発信日時と内容を定めて事前に確定する。そのほか日常の投稿やコミュニケーションについては手を動かす人間に任せる」という形態でした。
現在は「すべての投稿を事前に入念に打ち合わせをして確定する」ケースがほとんどです。運用を外注先に任せる場合だけではなく、社内で運用されている場合も同様の傾向があります。
なんか、ソーシャルメディアじゃなくて広告なんですよね。進め方が。でもまあ少し寂しくはありながら、それはそれで一定の効果を出せる状況になってきており、時の流れの中でクライアント様に提供するスタイルも少しずつ変わってきています。
と数年もんもんとしていた中で昨日SHARPさんがツイッターに投下されたのがこちらです。
はじめていらしたみなさま。はじめまして。家電メーカーSHARPの公式アカウントです。公式といいながら、ここでは私という平社員が「爆売れしたらいいな〜」とぼんやり願いながら「ただ毎日そこにいる」というふるまいを続けています。詳しくは画像で。 pic.twitter.com/qEjDeFq6uj
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) November 7, 2019
怒られるかもしれませんが画像になってる部分、全文書き起こします。
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シャープの製品が売れたらいいなと思いつつ、私はここで、宣伝する気がありません。なぜなら家電は必要に迫られて買うものです。推しへお布施したり、課金するものでもない。シャープをフォローしたからといって、シャープ製品を買う必要はありません。ましてや買えという広告を見る義理もない。ただでさえ買えという広告にあふれる世の中です。わざわざここで私が、広告を増やすこともないだろうと思うのです。
だからツイッターでのシャープは、みなさんの友人や知人、あるいはサザエさんの三河屋のように、なんとなくあなたの毎日にいる存在を目指したい。近所の野良猫を見かけると「あ、いるな」と思うように、私をツイッターで見かけたら「あ、いるな」と思っていただけるとうれしいです。
ただしみなさんがいつかどこかで、家電を買う必要に迫られた場合は、シャープも候補に入れてください。あっちとこっちで迷ったら、シャープを選んでもらえると幸いです。もちろんお買い物のご相談はいつでもどうぞ。それではどうぞ、よろしくおつきあいくださいませ。
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こちらを読んで思うのです。現在目標値として設定することが多い「クチコミの数」や「エンゲージメント数」とは、目標値として設定してそれを達成するために運用して到達するものではなく、そのメディア内で他のユーザーと地道に関わってきた、あくまで結果としての数値なのではないかと。
シャープさんのようなTwitterアカウントは、狙ってエンゲージメント率を上げたのではなく、ソーシャルメディアを楽しんで運用している担当者が振る舞った結果なのではないかと。
それを表面上の数値を見て「ウチもこうやろう」「クチコミを増やすぞ!」「ソーシャルメディアをやったら効果があるぞ!」とかいう状況になるのは、なんか違うのではないかと。
まあそう言いながら、私自身もいろんな場所でソーシャルメディアの運用についてお話をさせて頂いています。
そこではいつも「運用の目的を明確にしましょう」と伝えています。その目的の中には、選択肢として商品のプロモーションや認知の拡大といった項目も提示しています。
目標値を設定して追いかけようというお話もしています。これだけユーザーがいるメディアです。広告でも集客でも従来のオウンドメディア的な運用でもなんでもできます。「この運用スタイルが唯一の正解」などというものはありません。
ただ、ソーシャルメディアの原点である「企業アカウントであろうが個人アカウントであろうが、とにかくなんとなくおもしろく多くの人とワイワイやる」「その結果PR効果が生まれるかもしれないし生まれないかもしれない」みたいなところも、運用担当者のみなさん、どっかアタマの片隅に置いておいてほしいなと、シャープさんのツイートを見て思った次第でございます。
すいません。なんのノウハウもない感想文でございました。引き続きなにとぞ。
田村でした。
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